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毎日使用するガソリン機関はエンジンのかかりもよく調子が良いですが、たまにしか使わないようなガソリン機関はエンジンのかかりも悪くなりがちで、全く動かなくなってしまうことも多くあります。
趣味で使うものであれば、そのうち直してもらうかですみますが、畑仕事で使うものはそうもいかないでしょう。
また手作業で畑仕事をすればたいへんな重労働になってしまいます。
そこで、管理機のオーバーホールの機会を得ることができましたので、実際に行った処理を、問題点の切り分けから問題点の絞込み、解決まで順を追って掲載してみました。
同じような不具合のご参考になればと思います。

耕運機・管理機オーバーホールの機会をいただきました。
家庭菜園で使われていてエンジンが始動せず放置してあったようです。
外観から仕様を見ると3.5PSガソリン4サイクルエンジンということがわかりました。
(燃料がレギュラーガソリンと明記して あったため4サイクルエンジンと判断しました。2サイクルエンジンですと混合ガソリン使用と明記されているか、 2サイクルオイル給油口がついています。)
さっそく各部の状態をみてみることにしました

エンジン不具合チェックフロー

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作業手順と不具合箇所の洗い出し

プラグのスパークチェック

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プラグを外しプラグキャップに挿してリコイルスタータの紐を引きスパークが飛ぶか確認します。
OK:スパークが飛びました。
電気系統は機能しているようです。

(スパークが飛ばないとき:プラグの碍子にカーボンが付着して絶縁不良になり電流がリークして飛ばないこともあります。
プラグの掃除をしてみて下さい。)

エンジンオイル給油キャップを開けエンジンオイルの量を確認します。
OK:エンジンオイルの量は問題ありません。

リコイルスタータ紐が切れてしまったら >>

エンジン本体の始動チェック

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シリンダー内にガソリンを滴下しプラグを付けリコイルスタータの紐を引き燃焼確認します。
(模型の焼玉エンジンはこうして始動しましたネ)
OK:燃焼しました。
エンジンも問題なさそうです。

燃料系統のつまりチェック

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キャブレター部分の燃料ホースを外しキャブレターまでガソリンがきていることを確認します。

OK:ガソリンがきています。
タンクからキャブレターまでの燃料つまりもなさそうです。

キャブレター部分

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キャブレター部分のつまりが原因のようですので分解してみることにしました。
分解する前にニードル弁の位置にしるしをつけます。
そして、締め付けて何回転で締まったかを記録しておきます。
本機の場合は約1.5回転でした。

キャブレター分解洗浄

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キャブレターを分解洗浄しましたら7つのパーツで構成されていました。
● ベンチェリー部
● フロート
● タンク
● ピン
● ニードル弁
● フロート弁
● ボルト

この中のベンチェリー部は特に入念に洗浄し、ノズル(メインジェット、スロージェット、空気ブリード等)の孔は細い針金を挿入し丁寧に詰まりを落としていきました。
(各ジェット部にはオリフィスがあり孔径が細くなっているので注意が必要です)
一通り洗浄が終わったらエアーで通風を確認して乾燥させ組み立てました。

エアーフィルタ取扱注意

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「取扱注意OIL LEVELの線までエンジンオイルを入れてください。油が汚れた時は、清浄な油と入れ換えて下さい。
エレメントは時々ガソリンまたは軽油で洗い、洗浄後はエンジンオイルをエレメントに塗布し油を振り切って取り付けて下さい。」
と明記してあります。

エアーフィルタエレメントが付いてない

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エアーフィルタの油受を外してみると、エレメントが付いていないことがわかりました。
これではエアーフィルタの役目を果たさずキャブレターもすぐに詰まってしまうはずです。

エレメントの製作

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エレメントの目的は塵や埃がキャブレターに行かないように捕まえることですので、とりあえずスポンジで作ってみることにしました。
エレメントホルダーのパイプ径、ケーシングに入る外径、パイプのでっぱりの高さを測りコンパスで紙に円を書きハサミでドーナツ状に切り取りました。
その型紙をスポンジに貼り付けカッターナイフで切り取って出来上がり。
ちょっと不細工ですが、こんなものでしょう。

エアーフィルタ組み立て

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自作のエレメントをホルダーに取付、ケーシングに挿入するとなかなかいい感じに収まりました。
はやる気持ちを押さえながらキャブレターに取付け、エアーフィルタの受け皿にエンジンオイルを入れセットしました。
オーバーホール完了です。
余った部品や、やり残した工程がないか点検し、いよいよ試運転。
ガソリンコックをONにしてプラグも締めてキャップ取付OK、クラッチやギヤも確認してリコイルスタータの紐を勢いよく引くと「ダッダッダッ・・・」とエンジンが回り始める予定が、うんともすんとも言いません。・・・ガックリ
何度もリコイルスタータの紐を引きましたがエンジンがかかる気配もありません。
気を取り直してキャブレターを再点検してみることにしました。

再点検

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キャブレター手前までの燃料供給はNo.3で確認済なので、こんどはキャブレター内のフロートタンクにガソリンが来ているのか長期保管時燃料抜のネジを緩めて確認することにしました。
長期保管時燃料抜のネジを一周、緩めてもガソリンが漏れてきません。
二周、三周、とうとう抜けてしまいました。
どうやらフロートタンクにガソリンが供給されていないようです。
再びキャブレターを分解して洗浄し、よく乾燥させてからフロートやフロート弁の動きがスムーズであることを確認してキャブレターを組立ました。
エンジンに各パーツを取付け燃料ホースを差込みガソリンコックをONにして、再びフロートタンクにガソリンが来ているか確認します。
長期保管時燃料抜のネジを緩めて、ガソリンが漏れて・・・ キ・タァー
長期保管時燃料抜のネジを締め、リコイルスタータの紐を勢いよく引くと「ダッダッダッ・・・」とエンジンが? 
かかっ・タァー
二度、三度とエンジンの始動、停止を繰り返してもスムーズに始動します。
嬉しい!管理機がとても愛おしくなりそこらじゅうを磨いてしまいました。

別機でフロートタンクにガソリンが供給されなかった事例

他機のキャブレター修理でおもしろい事例がありましたので紹介します。

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チェックフローの順に確認します。キャブレターのホースまではガソリンが来ているようなのでキャブレターに問題が有りそうです。
キャブレター内のフロートタンクにガソリンが来ているのか確認するために「長期保管時燃料抜バー(この管理機はバーになっている)を引いてガソリンが漏れるか見ます」ガソリンは漏れません。
フロートタンクまでガソリンがきていないようです。
そこで、キャブレターを分解して見ると、フロート側のフロート弁を引っ掛ける樹脂フック部分が片方破損してはずれフロートの上部にフロート弁が乗っかり弁が下がらない状態になっていました。
これが、原因のようです。
そこで、何らかの方法でフロートのフック部分を補修することにしました。
たまたま、0.3mmの銅板があったのでそれをラジオペンチで樹脂のフロート弁がかかる厚さと等しくなるように折り曲げ付けることにしました。
接着にはガソリンに対して耐久性のある接着剤を使う必要があります。エポキシ樹脂の接着剤が良さそうなのでこれを使って接着することにしました。


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硬化するのを待ってフロート弁を付けてみました。
極端なバランスのずれはないようですので、このまま組み立てます。
組み立て後、燃料コックをONにして長期保管時燃料抜バーを引くとガソリンが漏れてきました。
フロートタンクにガソリンが来ている証拠です。これでエンジンがかかるはずです。
リコイルスタータの紐を引くと、エンジンはスムーズにをスタートしました。あとは接着剤の耐久性にかかってきます。

経過報告:キャブレター修理したのが2008年9月、5年経過した現在(2013年10月)でも快調に動いているのでエポキシ樹脂接着剤はガソリンの耐久性はあるようです。

使用後の手入れ

  • 長期間使用しないときはガソリンタンクとキャブレター(黄色い矢印のネジを緩め)のガソリンを抜く。
  • 定期的にエアーフィルタエレメントの点検をする。

ガソリン機関は、なぜ長期間放置するとエンジンがかからなくなるのか?

摩擦を伴う自動車エンジン燃料としてのガソリンとキャンプなどので使うホワイトガソリンを蒸発させてその残渣を調べてみた。


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