ガソリン機関を運転していると金属性の打撃音が発生することがあります。この現象をノッキング(ノック)といいます。
このノックの発生する原因として、なんらかの原因により未燃焼ガス(end gas)が発生しこのend gasは自発火温度に達しても、ただちに発火せずわずかな発火遅れの期間後、正常な火炎の到着を待たずに自発火するためにおこります。
この燃焼は正常燃焼と異なりend gas全体が同時に発火状態にあるので火炎速度が非常に大きく衝撃的圧力上昇となります。
ノックが発生すると排気弁やピストンが過熱され、オーバーヒートやエンジンの破損につながります。
ノックを防止する方法はいくつかありますが、燃料としては自然発火温度の高い燃料、発火遅れの長い燃料、火炎速度の速い燃料にすることです。
ノックの起こしにくさをアンチノック性といい、そのアンチノック性を数で示す尺度としてオクタン価が広く使われています。
オクタン価の大きな燃料ほどアンチノック性が高いといいます。
アンチノック性の高いイソオクタンと、アンチノック性の低いノルマルヘプタンのオクタン価を、それぞれ100および0とし、この両者を適当に混合し、イソオクタンの容積比でこの混合燃料のオクタン価をあらわします。
おおよそレギュラーガソリンではオクタン価:90~92、ハイオク(プレミアム)ガソリンはオクタン価:98~100です。

このような添加剤をアンチノック剤といいますが、その他にも燃料には清浄剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、着色剤等が添加されています。
このようにガソリン燃料には多くの添加剤が含まれています。
そこでガソリンを自然蒸発させ、時間の経過と共にどのような状態になっていくのか、キャブレター詰まりの原因物質を目視にて観察することにしました。
また参考として キャンプ用品の燃料として使われている、ホワイトガソリンを同じ条件で蒸発させ比較してみました。

レギュラーガソリンを開放された容器に移し、放置して蒸発させ、蒸発後のガソリンの状態を調べてみることにしました。
また、比較するための参考用としてキャンプ用品の燃料として使われているホワイトガソリンを同じ条件で蒸発させてみました。

(1)初日

初日

2008年8月8日、プリンのカップにレギュラーガソリン(右)とホワイトガソリン(左)を約90ccづつ移して放置しました。燃料の位置はカップの真中の帯下ぐらい。

5日後

2008年8月13日、レギュラーガソリン(右)は2/3の量です。ホワイトガソリン(左)はすでに1/3の量に減っています。

8日後

2008年8月16日、レギュラーガソリン(右)は1/3の量です。ホワイトガソリン(左)は空になりました。

42日後

2008年9月19日、レギュラーガソリン(右)の揮発性のあるガソリン分はすべて蒸発してなくなったようです。カップの上隅に白いものが沈殿しています。カップの下隅にはオレンジ色のオイル状のものがたまっています。

結果
蒸発後のカップに残った残渣を調べる
レギュラーガソリンの残渣
レギュラーガソリンのオレンジ色のオイル状のものは約1.2ccありました。(右端)
レギュラーガソリンのカップ底に沈殿していた白いものを割り箸ですくい取ると、約耳かき1杯分の量になりました。(オレンジ色に混ざっていますが白いものを集めたものです)
ホワイトガソリンの残渣
カップ底を割り箸ですくい取ると先端に青い染料(顔料ではなさそう)が微量付着しました。触指するとベトついていました。 (写真左端の割り箸)
上記の結果からレギュラーガソリンの添加物はオイル状で粘度があり、沈殿するものもありました。

その量はおおよそ容量の1.5%を占めていました。
ガソリンの蒸発や劣化に伴う粘度の増加や沈殿物はキャブレター詰まりの原因になると考えられます。
使用頻度の低いガソリン機関は使用後、キャブレターフロート室のガソリン燃料を抜いておくことが重要です。
もし、フロート室の燃料を抜かずに経過してしまった場合は、始動前に一度燃料コックを閉じフロート室の古い燃料を抜くと良いでしょう。
いずれにしても、キャブレターつまりの原因物質がたい積しないようにすることが肝要です。